2024年4月8日、皆既日食がメキシコ西岸から米国を通り、
カナダ北東部に至る北米大陸を席巻した。この日食に向けて、
NASAは数多くの研究プロジェクトに資金を提供し、
私たちの故郷である地球が太陽からどのような
影響を受けているか
(たとえば、私たちの恒星が地球の大気と
どのように相互作用し、無線通信にどのような
影響を与えるかなど)
を理解するというNASAの目標を支援するために、
市民科学者に呼びかけた。
12月10日火曜日の記者会見で、ワシントンDCで開催された
アメリカ地球物理学連合の年次総会に出席した
科学者らは、いくつかの日食実験の初期結果を報告した。
「科学者と何万人ものボランティア観測員が
月の影の至る所に配置された」
とワシントンのNASA本部の日食プログラムマネージャー、
ケリー・コレック氏は語った。
「彼らの努力は太陽物理学ビッグイヤーの
極めて重要な部分であり、太陽の光が
一時的に視界から消えたときに太陽が
地球の大気にどのような影響を与えるかについて、
私たちがさらに学ぶのに役立った。」
コロナの変化
4月8日、シチズンCATE2024
(アメリカ大陸望遠鏡日食)
プロジェクトは、テキサスからメイン州までの
地域コミュニティから35の観測チームを派遣し、
皆既日食中の太陽の外層大気、つまりコロナの画像を
撮影した。彼らの目標は、皆既日食が大陸を
席巻するにつれてコロナがどのように
変化するかを見ることだ。
12月10日、コロラド州ボルダーにある
サウスウエスト研究所のCATEプロジェクトマネージャー、
サラ・コヴァック氏は、いくつかのチームが
雲に阻まれたものの、ほとんどのチームが皆既日食の
観測に成功し、合計で47,000枚を超える画像を
収集したと報告した。
これらの画像は偏光、つまり異なる方向を向いた光で
撮影されたもので、科学者がコロナを形成する
プロセスをよりよく理解するのに役立つ。
CitizenCATE2024プロジェクトのこの予備的なムービーは、
2024年4月8日の皆既日食中にさまざまな場所から
撮影された太陽コロナの偏光画像を
つなぎ合わせたものだ。
コヴァック氏は、これらの画像から作成された
映画の最初のカットを公開した。プロジェクトでは現在、
すべての画像をつなぎ合わせて最終的な1時間の映画を
制作中で、後日公開される予定だ。
「CATE2024の素晴らしい点は、最先端の専門科学と
あらゆる分野のコミュニティ参加者を融合させていることだ」
とコヴァック氏は言う。
「参加者全員の献身によってこのプロジェクトは実現した。」
一方、地上5万フィートの上空では、NASAの
WB-57航空機2機が大陸を横切る日食の影を追跡し、
雲の上を観測して皆既日食の時間を約6分20秒に延長した。
機内にはコロナを研究するために複数の研究チームが
製作したカメラと分光計(光のさまざまな波長を分析する機器)が
搭載されていた。
皆既日食の画像には、太陽のコロナ、つまり外層大気が、
月の黒い円盤を取り囲む白い細い巻きひげのように見える。
この皆既日食の画像は、2024年4月8日にNASAの
WB-57航空機の1機に搭載されたカメラで撮影された
50ミリ秒露出の画像を30枚組み合わせたものだ。これは、
FeXIVと呼ばれるイオン化された鉄原子から放出される
光の波長で撮影された。この放射は、コロナにアーチ状の
構造が現れることが多い特定の温度(約320万度)の
プラズマと呼ばれる帯電ガスを強調する。
B.ジュステン、O.メイヤー、M.ジュステン、
S.ハバル、M.ドラックミュラー
12月10日、チームの1つを率いたハワイ大学の
シャディア・ハバル氏は、1つの困難があったにも
かかわらず、彼らの機器が貴重なデータを収集したと
報告した。航空機の翼に取り付けたカメラが
予期せぬ振動に見舞われ、画像の一部が
わずかにぼやけてしまったのだ。
しかし、すべてのカメラがコロナの詳細な画像を撮影し、
機首に設置された分光計は影響を受けなかった。
結果は非常に良好で、科学者らはすでに同様の実験を
この機で再度行う計画を立てている。
「WB-57は日食観測のための素晴らしい
プラットフォームであり、将来の日食に活用していきたい」
とハバル氏は語った。
大気に影響を与える
4月8日、アマチュア無線家は、
アマチュア無線科学市民調査(HamSCI)日食電離層科学フェスティバルの
一環として、日食の前、最中、後に信号を送受信した。
6,350人を超えるアマチュア無線家が5,200万を超える
データポイントを生成し、皆既日食中に突然太陽光が
失われることが無線信号と電離層
(地球の上層大気の帯電領域)
にどのような影響を与えるかを観察した。
黄色い安全ベストを着た若者数人が上を見上げている。
皆既日食のときのように、照明は薄暗い。1人はラジオ機器と
ラップトップを置いたテーブルに座り、ヘッドフォンをつけて
マイクを手にしている。一方、手前のもう1人は驚きながらも
喜びの表情で上を見上げている。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学の学生たちが、
2024年の皆既日食の際に無線機を操作する。
HamSCI/ケース・ウェスタン・リザーブ大学
皆既日食の進路内外での無線通信は、一部の周波数(1~7MHz)で
改善し、電離層吸収が減少したことが示された。
より高い周波数(10MHz以上)では、通信が悪化した。
高周波電波(3~30MHz)を電離層で反射させる別の技術を使用した結果、
日食中に電離層の高度が上昇し、その後通常の高度まで
下がったことが示唆された。
「このプロジェクトはアマチュア無線家を
科学コミュニティに引き入れる」
とペンシルベニア州スクラントン大学の教授でHamSCIの
リーダーであるナサニエル・フリッセル氏は言う。
「彼らの技術への献身が、この研究を可能にしたのだ。」
また、大気の観測では、全米日食気球プロジェクトが
全米各地の学生グループを組織し、2024年4月に月が国を横切る際と
2023年10月の日食の際に月の影に気球を打ち上げる計画だ。
チームは気象センサーやその他の機器を飛ばし、
冷たく暗い影に対する大気の反応を研究した。
画面の下部には地球の一部が小さく表示され、
上部の背景には真っ暗な宇宙が広がっている。大気は、
地球と宇宙を隔てる薄い青い帯として表示される。
皆既日食のときに月が落とす暗い楕円形の影が
地球に投影されている。
日食の影は、2024年4月8日に行われた
全国日食気球プロジェクトの一環として、
バージニア工科大学の気球に搭載されたカメラで撮影された。
全国日食バルーンプロジェクト/バージニア工科大学
800人以上の学生が行ったこの研究は、日食が地球の大気圏に
大気重力波と呼ばれるさざ波を発生させる可能性があることを
裏付けた。湖の水がかき乱されると波が発生するのと同様に、
空気がかき乱されると大気圏でもこれらの波が発生する。
ボーズマンのモンタナ州立大学の
アンジェラ・デ・ジャルダンが率いるこのプロジェクトは、
過去の日食でもこれらの波が発生したことを確認した。
科学者たちは、これらの波の引き金は、日没時に観測される
大気の影響に似た、地球の大気圏界面の
「しゃっくり」であると考えている。
「チームの半数は、このプロジェクト以前に
気球飛行の経験がほとんど、あるいは全くなかった」
と、メリーランド州グリーンベルトにある
NASAゴダード宇宙飛行センターのチーム科学専門家で
大気科学者のジー・ゴン氏は言う。
「しかし、彼らの懸命な努力と研究が、
この発見に不可欠だった」
2024年4月8日の皆既日食:
市民科学者とNASAの共同研究が明らかにした新たな発見
2024年4月8日、北米大陸を横切った皆既日食は、
世界中の科学者と市民科学者の注目を集めた。NASAは、
この貴重な機会を最大限に活用するため、数多くの
研究プロジェクトに資金を提供し、市民科学者の
参加を呼びかけた。
コロナの謎に迫る
シチズンCATE2024プロジェクトでは、35の観測チームが
皆既日食中の太陽コロナの画像を撮影した。これら
47,000枚を超える画像は、コロナの構造や変化を
詳しく分析する上で貴重なデータとなっている。
NASAのWB-57航空機は、地上5万フィートの上空からコロナを観測し、
より高解像度の画像を取得した。これらの画像からは、
コロナのアーチ状の構造や、特定の温度のプラズマの
存在などが明らかになった。
大気への影響
HamSCI日食電離層科学フェスティバルでは、6,350人以上の
アマチュア無線家が、皆既日食が無線信号と電離層に与える
影響を調査した。その結果、皆既日食中は無線通信が
一部の周波数で改善し、電離層の高度が
上昇することが分かった。
全国日食気球プロジェクトでは、800人以上の学生が
気球に気象センサーなどを搭載し、大気重力波の発生を観測した。
この結果は、日食が地球の大気圏に影響を与えることを
示唆する重要な発見だ。
市民科学の力
これらの研究プロジェクトは、市民科学の重要性を
改めて示している。市民科学者たちの熱意と献身が、
科学の発展に大きく貢献しているのだ。
今回の皆既日食は、科学者だけでなく、多くの人々にとって
忘れられない体験となった。今後の研究では、
これらのデータがさらに詳しく分析され、太陽や地球の謎が
解き明かされることが期待される。
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