北部のスモーランド地方に位置する小さな町、グレナは、
スウェーデンの「キャンディの首都」とされている。
毎年何百万本もの赤と白のポルカグリス（キャンディケイン）が
手作りされている。
ブラヘガタン（メインストリート）沿いのショーウィンドウには、
象徴的なお菓子を目当てに押し寄せる多くの観光客を
待つかのように、カラフルな商品がいくつも並んでいる。
ホリデーシーズンには、クリスマス市場やコンサートが開催され、
来場者はショウィンドウ越しにキャンディ職人が
赤と白のスティックを作る様子を見学できる。
このお菓子の歴史は1859年に遡る。25歳の
主婦アマーリア・エリクソンは未亡人となり、娘のイーダと
二人暮らしをしていた。自分で生計を立てることを決意した
アマーリアは、結婚式、洗礼式、葬儀などのお菓子作りを始めた。
当時のスウェーデンでは女性が事業を営むことが
認められていなかったが、グレナの治安判事からお菓子販売の
許可を得たアマーリアは、市長のカール・ヨハン・ベンバーグの
承認を得て、自分自身の事業を始めた。彼女はスウェーデンで
最初の女性起業家の1人となった。
アマーリアのポルカグリスは、砂糖、酢、水の煮詰め液を
練り上げて作る。当初は小さな枕形（プルッター）で
作られていたが、最終的にはスティック状の形に成形された。
生地の一部は赤く着色され、もう片方は白く
ペパーミントのフレーバーが付け加えられる。
何年にもわたって、アマーリアはポルカグリスのレシピを
秘密にしていたが、生涯彼女の元で働いていたイーダにだけ
打ち明けた。アマーリアは1923年に99歳で亡くなったが、
イーダは家族のキャンディ作りの伝統を引き継ぎ、
レシピを公開した。
1950年代になると、グレナでの生産量が増加し、キャンディは
ますます人気が高まり、多くの女性がアマーリアの足跡をたどって
一年を通してキャンディを作るようになった。地元の人たちは
台所でポルカグリサル（ポルカグリスの複数形）を煮込み、
子供たちに籠に入れて街頭で販売させた。
まもなく、スウェーデン南部と首都ストックホルムを結ぶ
主要道路リクセットワンに甘いスタンドが相次いで登場した。
キャンディケインは観光客のマストアイテムとなり、
今日でもポルカグリスは高い人気を誇っている。町で正式に
キャンディの製造・販売を許可されている専門の菓子職人は
わずか14人だ。2022年、本物のグレナ・ポルカグリサルは
EUから地理的表示保護を受けた。この保護は、このお菓子が
グレナの旧地区でのみ作られることを意味する。
キャンディケインは一部の菓子職人が年中作っているが、
4月20日は公式のポルカグリスの日だ。この日に本格的な生産が始まり、
グレナはホリデーシーズンの需要に向けておいしいお菓子を
作り出すアマーリアに敬意を表する。約2,700人の住民を擁する
この小さな町は、グレナ美術館に彼女の功績を称えた展示を設置し、
キャンディケイン人気が始まった頃の生活の様子を伝える
古い写真や説明文を展示している。メインストリートにある
アマーリアの自宅は現在、18世紀の雰囲気を漂わせる
20室のみの高級ブティックホテル
「アマーリアス・ハウス」になっている。
クリスマスに関連付けられたおなじみのJ字型のキャンディケインが
いつ生まれたのかは完全には分かっていない。このキャンディは
早くも1670年にドイツで生まれたと言われている。
この説によると、ある聖歌隊指揮者が砂糖のスティックを
小さな羊飼いの杖の形に曲げ、聖歌隊の少年たちに
降誕劇の間静かにさせておくために与えたそうだ。ただし、
1847年にオハイオ州でドイツ系スウェーデン人の移民、
オーガスト・イムガルドがクリスマスツリーに
キャンディケインを飾ったことが知られている。
菓子職人や消費者に人気の高いこのキャンディは、
2013年に一度だけ、菓子職人によるキャンディ選手権が開催され、
ステファン・フランソンが優勝した
（フランソンの父親、アルフはグレナで最も
権威のある菓子職人の1人であり、彼の墓石には
「ポルカグリスの王」の文字が刻まれている）。
今日、フランソンと彼のパートナーのキャトリン・クビスト、
そして共同経営者のスザンヌ・サミュエルソンは、グレナの
メインストリートに「ポルカプリンセン」というショップを構え、
他の13のショップとともにポルカグリスの伝統を継承している。
1970年代後半、初めてポルカグリスが別の色で作られたのは、
青と黄色でスウェーデン国旗をイメージしたものだった。
「これは大きな話題となり、ポルカグリスの終わりだと
思った人もいたが、その後、どんどん新しいフレーバーと
カラーが作られるようになり、毎年私たちが新しい味を
考案している。定番の品に加えられたものもあれば、
夏だけの期間限定品もある」
とクビストは語っている。
現在、ポルカプリンセンは55種類のポルカグリスを作っている。
有名な赤と白のペパーミントから、シナモンロール、
フルーツポンチ、ターキッシュペッパー、ウィスキーなど、
珍しいフレーバーまで揃っている。
0 件のコメント:
コメントを投稿