―世界最年少チェス王者、グケシュが歴史作る―

 

2024年12月12日

11年前の2013年、8歳だったグケシュは、

いつかインドにタイトルを持ち帰ると誓った。

ムンバイ：グケシュ・ドマラジュ氏は、

11年前の記憶を振り返り、少しだけグケシュは考えを巡らせた。

彼は、チェンナイで開催された2013年世界チェス選手権で、

インドの伝説的なチェス選手、ヴィスワナタン・アナンド氏が

マグヌス・カールセン氏とタイトルをかけて戦うのを

観客席で見ていたときのことを詳細に語りだした。

インドのD・グケシュ選手は、シンガポールで行われた

スリリングな対決の第14局と最終局でタイトル保持者の

中国の丁立仁選手を破り、18歳で

世界最年少チェスチャンピオンとなった。

「観客席でガラスの箱の中を眺めていたとき、

　いつか自分もその中に入れたら最高だと思った」

と、シンガポールで行われた2024年世界選手権の

試合後の記者会見で世界チャンピオンのグケシュは語った。

「マグナスが勝ったとき、インドにタイトルを

　持ち帰るのは自分だと思った。10年以上前に抱いた

　この夢は、これまでの人生で最も重要なことだった。

　そして今、これが単なる夢ではなく現実になったので、

　あの8歳の子供はきっととても喜んでいるだろうと思う」

木曜日、グケシュはまさにそれを達成した。最終戦で

前回優勝者のディン・リーレンを破り、チェンナイ出身の

18歳のグケシュはインド人として2人目のクラシックチェスの

世界チャンピオンとなり、悲願の栄冠を獲得した

史上最年少のチャンピオンとなった。

ディンが投了すると、普段は冷静なグケシュは、

自分の功績の重みを実感し、涙を流した。

「あの状況で勝てるとは思っていなかったので、

　感極まってしまった」と彼は語った。

「5、6時間戦って引き分けになると思っていた。

　すでに大勝負のタイブレークを戦う覚悟はしていたが、

　突然チャンスが訪れた。突然すべてが終わり、

　夢が叶ったのだ。」

4月、グケシュは世界選手権への登竜門である

候補者トーナメントで、あらゆる困難を乗り越えて優勝した。

しかしそれ以来、このティーンエイジャーは、有名な

メンタルコーチのパディ・アプトンとチームを組むなど、

タイトル獲得のためにあらゆるチャンスを自分に与えてきた。

この南アフリカ人は、2011年のICCワールドカップで優勝した

インドのクリケットチームで働いたことで有名で、

最近では2024年のパリオリンピックで銅メダルを獲得した

インドの男子ホッケーチームでも面メンタルコーチとして

代表チームに加わっていた。

「私たちは5月から一緒に練習を始めた。特に世界選手権と、

　それにかかっているすべてのことのためにだ」

とグケシュは語る。

「私は正しい精神状態を保つ必要があったが、練習は楽しく、

　勉強になった。私たちが話し合った重要なことの一つは、

　ディンの調子の不安定さだった。パディはチェスを

　よく理解していないが、スポーツとその背後にある

　心理学を理解している。」

グケシュは、あらゆる準備にもかかわらず、世界選手権の開幕戦で

敗退という最悪のスタートを切った。

「どれだけ準備しても、18歳でここに来て、

　僕のような負け方をするのは屈辱的で、この試合で

　直面した最も厳しい試練だった」

と彼はいう。

重要なのは、グケシュがアナンドから適切なタイミングで

重要なアドバイスを受けたことだ。5回の世界チャンピオンである

アナンドは、グケシュのチームに正式に所属したことはなかった。

「でも、彼は私をサポートしてくれていたんだ」

「トレーニングキャンプのほとんどに同席してくれて、

　いくつかのセッションではリモートで手伝ってくれていた。」

しかし、グケシュがディンとの第1ゲームに負けた後、その夜遅く、

この若者はホテルのエレベーターでアナンドと偶然出会った。

「彼は私に『私は11ゲームやったけど、君は13ゲームやる』と言った」

とグケシュは思い返した。

「それは素敵な瞬間だったし、これは1ゲームで、

　まだ長い試合だということを思い出すいい機会だった。

　私はチャンスをつかむつもりだ」

チャンスが訪れ、グケシュは特に木曜日の第14試合で

それを最大限に生かしきった。

しかし、勝利の瞬間に、彼はこれまでの道のりを振り返り、

彼のチェス選手としてのキャリアに支障が出ないように

両親が苦労したことを思い起こした。

「私たちの家族は裕福ではなかった（両親は）経済的に

　苦境に立たされた」とグケシュは語った。

「そのときは、両親がどんなに苦労したかはわからなかった。

　2017年から2018年にかけて、お金が底をついた。その時、

　両親の友人が名乗り出て、私がプレーできるように

　スポンサーになってくれたのだ。両親が耐え忍んだ

　すべての苦労、生活スタイルの変化は、

　私がプレーするためだけのものだった。」

家族は粘り強く努力し、グケシュは今や彼のスポーツ界最大の

タイトルを獲得した。しかし、世界タイトルは

「夢の一部」に過ぎないと彼は説明した。

「私の目標は、できるだけ長くトップに立つことだ」

と彼は語る。

「世界チャンピオンになったからといって、

　私が世界最高の選手だというわけではない。もちろん、

　それはマグナスだ。非常に高いレベルの選手がいることも、

　モチベーションになる。それが、マグナスが達成した

　偉大さのレベルに到達するために、正しいことを

　し続けるための原動力だ。」

彼が同じインド人選手と世界タイトルをかけて対戦できるという期待もある。

グケシュはチェス界を席巻している若きスター選手集団の一員だ。

「これからもチェス界を盛り上げて、競い合い、

　励まし合い、団体戦で一緒に勝ち続けていきたい」

と彼は語った。

しかし現時点では、チェス界はグケシュのものだ。

記者会見で、このタイトルが自分にとって

どんな意味を持つのかを一言で説明するよう求められた

グケシュは、再び少し時間を割いて考えをまとめ始めた。